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 無料英会話クラスに登録する英語のレベル分けテストは朝八時に始った。その内容は、英文がありそれをもとにした問いに答えるという方法である。レベル分けは大まかである。そのため同クラスでもできる人と、そうではない人のレベルの差はかなり感じた。だが、教師の教え方が上手なので約３０人いたクラスメートは、ほとんど落ちこぼれることもなくついていくことができた？！と思う。 授業内容は文法中心である。アメリカで仕事につく人のための英語教育なので、正しい文章が書けるかどうかは入社試験の重要なポイントになるためであろう。そのため授業内容は日本人にとっては易しいが、教師の説明やフリートークはわからないことがしばしばあり、次に何をするのか聞き取れずにポカンとしていると、誰か必ずクラスメートが親切に教えてくれた。先生も生徒同士の助け合いを奨励していた。そんな心の教育も、いま思えば知らずに授業の中にちりばめられていたように思う。  出会いの多かった学校生活こんなことがあった。授業によっては、ペアになったりグループになったりすることがある。そんなとき、いつも見慣れた隣同士ではなく、話をしたこともない離れた席の人とパートナーを組ませる。この方法はいろいろな国の人と親しくなるには最適である。友だちの輪が広がるし、国や人を理解することにもなるからだ。 クラスメートの平均年齢は２０代。だが、私たちワールドステイクラブ（海外ロングステイに必要ないろいろな情報を提供してくれる会員制のクラブ）のメンバー５人が入ったため平均年齢を一気にアップさせてしまった。国籍は南米、ベトナム、カンボジア、ロシア、アフリカなどだが、なかでもメキシコが多かった。永住権を持ち、すでにサンディエゴで生活をしている人が多いので英会話はペラペラではないがそれに近い。だだし、すごい訛りがある。 私の隣にいつも座っていたのは、将来は弁護士志望のメキシコ人である。彼は誰にでもとてもやさしかった。和英辞典をしばしば使っている私を見てある時「英英辞典を使った方がいいよ。ボキャブラリーが同時に増えるから」と言う。「ハイハイ」とは言ったものの依然、和英辞典を広げる私を見て辞書を取り上げられてしまった。そのかわり自分の英英辞典をかしてくれる。その突然の行為にちょっと驚いて彼を見たら「だめっ！」っていう顔をしていたので、つい吹き出してしまった。  とても工夫されたテキストブックこんなこともあった。ブレイクタイムに学校のテキストブックと格闘していたときである。ふと気がつくと、このテキストが文や単語を自然に覚えさせてしまうよう工夫（同単語の繰り返しが多いのに、飽きさせない文作りなど）されていることがわかり、それでつい「このテキストブック大好き！どこか本屋さんで買うことできないかな」と言ったら翌日、似たようなスタイルの教科書をサンディエゴ・ダンウタウンの図書館から借りてきてくれた。売っていないからコピーしろと言う。「じゃ、すぐコピーしてこのテキスト明日返すわね」と言ったら、貸出期限が２月１５日なのでそれまで持っていていいと言う。私は「２月７日には日本に帰る」とは言いそびれてしまった。 母国では職がなく、アメリカで仕事を見つけなければならない彼らにとって英語は生きる手段である。真剣だ。そんな中で、たった一ヶ月だけ学びに来たとは言えなかった。だからせめて遅刻せず、休まず、まじめに勉強しようと思った。そして、わかる範囲で日本のいろいろなことを伝達できたらとも思った。彼らは日本のことをとても知りたがったからだ。  もう挨拶だけの友人ではイヤ！そうこうしている内に、またたくまに学期末の１月２７日がきてしまう。約１５人ほどがステップアップして上のクラスへ移っていった。そしてあらたに新入生を迎えてクラスの雰囲気も変わっていった。帰国のせまっている私は今学期でこの学校を辞めることにした。 そして残る１０日間を、まだあと一ヶ月はサンディエゴにいるという友人につき合って英会話スクール探しに奔走した。なぜならコミュンティセンターの英語科は、一方的に教師の話を聞くだけで英会話の授業がない。そのためヒヤリングの訓練にはなっても、スピーキングの訓練にはならないからだ。 話す前にまずヒヤリングができなければ、という人もいる。しかし、ヒヤリングは一人でも日本でも訓練のチャンスはある。スピーキングは相手が必要だ。英語で自己表現もしたいし、もう挨拶だけの友人ではいやだ。もっと他国の人と語り合いたい。理解したい。だから英会話の勉強がしたいのである。 フリーペーパーで学校探しそんなわけで、現地の日本語新聞の広告で見つけた英会話スクールを３校ほど訪問した。一つめは、アパートからバスを乗り継いで３０分くらいの所にあった（ただしバスは一時間に一本の時もある）。教師はこちらに２５年在住の日本人の男性。マンツーマンで９０分１５ドル。どんな教え方をするのかデモストレーションを一時間ほどしてもらう。日本人教師のため発音が気になったが、授業進行はネイティブスピーカーのテープを使用した。が、やはり質問も疑問点の応対などもつい日本語になってしまう。おかげでよく理解はできたが…。しかし交通が不便なことも合わせてここはパスする。 二つめは、大変便利なダウンタウンにあった。交通の便がよいということは通学の必須条件である。あいた時間を他のことに活用できるし、その上冬は午後五時には暗くなってしまうので一日が大変短い。ここは比較的安全とはいえ、薄暗くなってからの女性ひとり歩きはまず見かけない。 この学校は一クラス１５人から２０人。だから授業料が他と比べて安いわけである。残念ながら当日は、クラスのエクスカーションとかで授業風景は見られなかった。だだ、テキストブック中心の授業らしい。短期間で密度の濃い授業を望んでいる私たちにとって、一クラス１５人以上というのは希望にそぐわないためここもパスする。 なんか私も本気になって友人と一緒に学校探しをしていた。というのも再びサンティエゴを訪れたいと思っているからである。 教室は海の上残る最後の学校はＧＡＬＩ、エアポートに近く、Ａｍｅｒｉｃａ’ｓ Ｃｕｐ Ｈａｒｂｏｒ内にあり、その競技が目の前でみられる湾内に建っていた。教室内は明るく海の香りがした。教師も底抜けに明るい人でとても感じが良い。何となくここに決まりそうな予感がする。気にかかるのは授業内容だが、正式の語学教師の資格を持つ人なので、一人一人レベルを見て、それに合わせたカリキュラムを作り、フォローしてくれるとのこと。授業時間は９時から１３時、週５日制で一時間８ドル。入会金なしで、テキスト代こみのおやつ付きである。今はシーズンオフのため生徒は一人だという。私はナンシー（教師の名前）の人柄と感性に惹かれるものがあり、３日間だけレッスンしてもらいたいと頼んでみた。 ナンシー「歓迎よ。小人数なので何でもフレキシブルにやれるから問題ないわ。でもどうして３日間なの？」 私「３日後に日本に帰るんです。」 ナンシー「？！」「でも絶対にサンディエゴに戻ってらっしゃい。待っているわ。」 こんなことでレッスンを受けることになった。友人はむろん約一か月ここで学ぶ決心をする。そのため、現在のアパート８１９からでは通学が不便だと、ホームスティ先をナンシーに紹介してもらう。一緒にホストファミリーにも会いにいったが、さすがにナンシーが推薦するだけあって、とても感じのよい５０代の一人住まいのアメリカ人女性だった。そしてこの学校のもうひとつの利点は、事務の人が日本語のできる大学生なので何かと助けてもらえることである。私たちは朝の通学のピックアップ、授業に対する要望の通訳、引越しの手伝い、など本当にいろいろお世話になった。 教師の姿勢ひとつで学ぶ意欲わくさて授業のことを話そう。９時から１３時までほとんどフリーカンバセーション。内容は、実際に日常生活で使われる会話場面を再現する。質問もため息もなにもかも英語の世界。その間ブレイクは１０分のみ。ナンシー差し入れのティーとマフィンを食べながら海を見て過ごす。ウイークエンドの金曜日は、ビデオでの映画鑑賞日である。その日は、「リトル仏陀」を見た。むろん字幕スーパーはない。鑑賞後は、疑問点、感想などのディスカッション。映画のストーリー展開はたいしたことなかったが、感心したのは、何回も見たであろうこのビデオを、ナンシーは一度も席を立つこともなく私たちと一緒に見続けたことだ。そして言ったことはひとこと「理解できないところがあったら質問しなさい」だった。その質問がいつされるかわからないため、ナンシーはずっと待機していたのだろうか。
ここでナンシーのプロフィールを紹介しよう。彼女は、午前中は英会話の教師で午後からは大学の講師。ヨガと瞑想に興味を持ち、ベジタリアンである。そして約束したことは必ず守ってくれた。ナンシーの夫は、造船技術を持ち世界中を船で旅をしている、目のとても澄んだやさしい人だった。そのため夏に入学すると無料でセーリングを教えてくれるという。そしてとても仲の良い夫婦である。生き方も生活環境もまさに理想を絵に描いたような二人だった。 私に英語力があれば、心豊かな二人ともっとたくさん話し合いたかった。そしてこうも思った。英語力以前の問題として、感じる心を育て、それを表現する力をつけておかなければ、たとえ英会話ができたとしても楽しいコミュニケーションは生まれないということを…。 自己発見の多いアパート生活 スタジオ８１９はフリーウェイのすくそばにあった。だから窓を開けると自動車の騒音がすごい。でも私の部屋は五階で住宅側だったので気にならなかった。そのすごさを知ったのは四階にあるキッチンにいったときだ。 私たちワールドステイのメンバーは、たまにキッチンでうどんパーティを開いた。暑かったので窓を開けると一瞬、みんなの会話が聞こえなくなる。気にしだすと窓を閉めてもその騒音は聞こえてきた。でもビールで乾杯し、寄せ集めの材料と食器でクッキングを始るころにはもう騒音のことは忘れていた。 うどんも米も醤油も、おばけ葱や寿司も、みんな近くのスーパーで手に入る。食べたいのに手に入らなかったのは梅干しと焼きのりと味噌。和食はなければないで全然平気なのだが、差し入れなどでいったん口にしようものなら、とたんに恋しくなる。 その夜のメニューは、おばけ葱とサラダ菜入りの煮込みうどん、煮豆の缶ずめ、ミックスピザの残り、ポテトチップス、形容しがたい中国菓子とバラエティにとんだ、早くいえばメチャクチャ寄せ集めのディナーだった。それでも一つ一つが貴重で珍しくおいしかった。それは日本での繰り返しの日常から脱出できて、気持ちがハイになっていたからだと思う。 食後はラスベガスに行ったときじっと見ているだけで、とうとう参加しなかったカードゲームのブラックジャックをやる。賭金は手づくりのドル札。本物ではないのでまったく緊張感なし。でもよく笑った。 アパート内の設備メンバーは平均年齢が高いので集中力と体力に弱い。そのためパーティは午後八時にはお開きになったが、まだ体力のある私は部屋にもどって洗濯を始める。２４時間ＯＫのコインランドリーが１階にあるが、私も一緒に洗ってほしいくらい大きいので小物は手で洗う。部屋はエアコンがきき乾燥しているのですぐ乾く。次の洗濯物は私。シャワーしかないので、風呂に入るというより体の洗濯という感じである。このシャワーの欠点は、熱い湯がすぐでないことと、出る時間が気まぐれなことである。特に早朝など湯になるまで待っていたら風邪を引いてしまうし、学校に遅刻する。 さて、さっぱりすると再び食欲がでてくる。３６チャンネルもあるＴＶのチャンネルをまわしながら電子レンジで湯を沸かし、コーヒーとボイルスピナッチ、ボイルポテトをつくる。ミネラルウォーターなみにワインが安いので、生ジュースをいれて寝酒によく飲んだ。ワインが欲しくなるのは特に夕焼けがきれいなときである。部屋のライトもＴＶも消し、真っ赤に輝く素晴らしい夕日を体いっぱいに浴びる。こんなとき「あぁ外国にいるんだなー」と実感する。 海の香りで包まれた美しいサンディエゴの街学校のあるときは、朝食づくりも考えて六時起床である。朝食を食べないととてももたない。七時半にはアパートを出て、バスストップまで１０分歩く。このちょっとした散歩がまた楽しい。まだ開店していないガラスのショーウィンドウで猫が二匹いつも遊んでいる。そこに閉じ込められているところをみると、無人時の家具店の宣伝（注目を集めるという）に使っているらしい。あんまり可愛いので、その前でつい足を止めてしまうからである。 それからバスに１０分乗ると、ちょうど八時に教室に到着できる。ジャスト八時だと授業はすでに始っている。だだし遅刻者が異常に多いので（これは夜遅くまで働いている人がいるためだと思う）、この時間帯は黒板に書かれた質問を書き写すというライティングが中心の授業だ。このスタイルなら後でノートを借りることもできる。またそのように先生が工夫をしているようである。 どこにも寄らず、わき目もふらず帰るとアパートには１３時には着く。でもそんなことは一度もしたことはない。宿題がないので午後は思いっきり自由を楽しむ。学校から歩いて２０分くらいで（バスもある）ダウンタウンに着くので買い物したり、図書館に行ったり、ホテル巡りをしたり、シーポートビレッジでカモメと遊覧船を眺めながら、テイクアウトのランチを食べたりした。
参考までに私が感じたアパートに対する長所と短所をあげてみます。アパートを借りるときの参考にしてください。 【 長所 】 ●歩いて２０分くらいでバルボアパークに行けたこと。このパークは休日にはさまざまなイベントが行われる。特に素晴らしかったのは、巨大なパイプオルガンをバックに黒人ソロのライブ（無料）であった。その他、世界中の民族ダンスを楽しむ会のパーティも楽しかった。各国のお国自慢の料理も買えるが、選択を誤ったのかこれはおいしくなかった。２４時間ＯＫの大きなスーパーが、歩いていける距離に３軒あったこと。スーパーは、その国のライフスタイルが反映されているからすごく楽しいしワクワクする。また、安全な散歩コースにもなった。 ●バスの乗り降りに便利な場所だった。ドライバーに「ユニバシティ・アベニュウ８００」の近くに行くかどうか聞くとすぐわかって応えてくれた。 ● いつでもだいたい日本語の出来るスタッフがいる。そのため言葉のミスを気づかうことなく情報がそく手に入った。 ●電子レンジがある、３６チャンネルのＴＶが見ほうだい、カードキーなのでわずらわしくない、コピー機がある、ＦＡＸの送受信が可能、暗証番号を覚えておけばフロントを煩わすことなく２４時間出入りＯＫ、各種割引券がロビーにおいてある、キッチン用具をしぶしぶフルセットで貸してくれる、など考えれば１か月オール込み３８０ドルは安い。 【 短所 】 ● メッセージなど自分からあるかどうか毎日聞かないと知らん顔のシステム。そのため、現地の知人からのメッセージを一日遅れで聞いて連絡が遅れ、知人に迷惑をかけてしまった。重要なメッセージが来ることが事前にわかっていたら、その旨頼んでおくこと。それでもスタッフは三交代制なのか、めまぐるしく変わるので忘れ去られることもあり得るので常に尋ねること。 ●湯が気まぐれ。早朝など７時近くならないと熱湯が出なかった。そのため電子レンジで湯を沸かした。シャワーは熱湯が出るかどうか確かめてから支度しないと風邪をひいてしまう。 ●スタッフは意外と観光情報にはうといので、頼らず自分の足で情報収集した方がよい。その方がいろいろ覚えると思う。これは結果的に私には短所ではなく長所だった。どこに行けば良い情報が得られるか勘がさえてきたし、この体験は他の国に行った時でも活かせるからである。 ● スタッフも宿泊客も日本人が多いため、語学のレッスンにならなかった。 ●部屋の位置によっては車の騒音はすごい。出発以前に５階以上で住宅地側をＦＡＸでリクエストしておくとよいかもしれない。でもシーズンオフでさえ空き部屋が少ないので、そうとう前から頼んでおく方がベターかも。 私たちは５人のメンバーで行ったが、一組除いてみんな部屋は別々のフロアーだった。 ● そのためroom to room にも使える電話は大いに活躍した。しかし料金はまったく同じなのに電話のない部屋もあるので注意のこと。電話なしだった彼女へのメッセージはマラソンになったからである。 ●隣室の騒音が聞こえてくることがある。ということは自分の騒音も隣室に聞こえるということである。 ●キッチンのある偶数階フロアーは、夕食時になるとさまざまな匂いがしてくる。好きな匂いなら良いが…。 ヒルクレスト（アパート周辺のエリアネーム）の地図をみたら、近所にも家具付きの立派なアパートが紹介されていた。また散歩中、ダウンタウンにも公園にも近いところに「空き部屋あり」の看板をよく目にした。観光のつもりでアパート探しめぐりも楽しいと思う。私は料金を前払いしてしまったし、移動がめんどくさかったので探さなかった。
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家具付のアパートを１ヶ月借りる
